「深夜特急1 香港・マカオ」 / 沢木耕太郎




日本版バックパッカーのバイブル

著者の実体験が元にされている紀行小説です。

今となっては少し古い本ですが、当時はこの本を読んだことをきっかけに、海外へ一人旅に出る若者が増えたとかなんとか。

単に観光名所を巡る旅行というよりかは、地図一枚を片手に現地を歩き回る流浪の旅の物語が描かれているといった感じです。

ちなみに大沢たかお主演でテレビドラマ化もされているらしいです。

 

あらすじ

主人公である26歳の「私」はある日仕事を辞めて旅に出ることを決意した。旅のおおまかな目的はインドのニューデリーからイギリスのロンドンまで乗合いバスで行くというもの。

航空券入手のため訪れた旅行代理店で、同じニューデリーまでの航空券なら、香港、バンコクでストップオーバーしてはどうか、という提案を受けその場でまず香港へ向かうことに決める。

最初に泊まる宿すら決めず降り立った現地の空港で、主人公はたまたま知り合った香港人から安宿を紹介してもらうことになる。

その名はゴールデン・パレス・ゲストハウス

訝りながら訪れたそのゲストハウスはなんと連れ込み宿であった。

その場で出会う麗儀という若い女性。

香港での宿を後にし、向かった先のマカオのカジノでついつい入れ込んでしまった「大小」という名の博打。

遠路2万キロ彼方のロンドンへの旅が、まずは香港・マカオから始まる。


デリーからロンドンまで陸路での長距離旅

活字から伝わって来る香港の人々、町の喧騒

ぼくは香港には行ったことはありませんが、この本を読んでいると1970年代の香港の光景が鮮明に脳裏に浮かんできました。

狭い道にひしめく屋台の数々。そこを行き交う香港人一人ひとりの表情や熱気。

ある屋台で名前も知らない現地の香港人に、主人公がご飯を奢ってもらう場面すらも。

文章の綺麗さなどではなく、物語自体に重きを置いていて、読みやすく書かれているのがそれを可能にさせているのかもしれません。

主人公は香港のゴールデン・パレス・ゲストハウスという連れ込み宿で、麗儀とい若い女性と出会います。

女っ気の全くない本編では、若い女性との甘酸っぱいような遣り取りはそれしかありません。

しかも彼女は英語を話すことができません。

言葉が通じない二人が、その後どのように意思を疎通させ、お互い何を思うのでしょうか。

 

マカオでの博打

主人公は短期滞在のつもりで香港から船に乗ります。行き先はマカオ。

それは大学在学中、受講していたスペイン語の講義で、担当講師であるスペイン人が頻りにマカオのことを話題に挙げていたからという理由です。

マカオでの目的であったパウロ学院教会を見学した後、主人公は近くにある適当なレストランに入ります。

そして、レストランの給仕との会話の中で、カジノで確実に勝つ術が存在するのでは、と思うようになります。

カジノでは主人公はディーラーの癖を読んだり、カジノ側が仕掛ける詐欺行為の逆を突くことで利益を得ようとします。

カジノでの主人公の心理描写や、ディーラーとの駆け引きはとても面白くて、物語にどんどん引き込まれて行ってしまいます。(博打のことになるのでこの辺は男性読者の方が共感しやすいのかもしれません)

 

海外への一人旅

それは、誰しもが一度は描いてみたことのある夢ではないでしょうか。

訪れたことのない土地に赴き、国籍も人種も異なる現地の人々と出会う。

味わったことのない食べものを口にし、自らの価値観では到底測ることの出来ない文化に触れる。

だけど、ぼくらはそう容易に長期間海外を旅することはできません。

家族、会社、金銭的な問題などが大きく伸し掛かり、ぼくらの夢を阻んでしまいます。

「深夜特急」はそうした海外への旅に出てみたいけど、なんらかの理由で行くことができない、といった人にこそオススメしたい作品です。

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