「世紀の相場師 ジェシー・リバモア」 / リチャード・スミッテン




「株で一発当ててやろう」という考えは多くの人が抱く夢ではないでしょうか。

20世紀前半、アメリカのウォール街で活躍した相場師のジェシー・リバモアは正にその思いを具現化した伝説の投機王です。

この本にはかつてリバモアが活用していた株式市場での投機手法や、当時の彼がどのような私生活を送っていたのかが描かれています。

投資や投機といった観点だけではなく、過去に実在した偉大な人物の伝記といった読み方でも非常に面白みがあると思いました。

 

世紀の投機王の生い立ち

リバモアはアメリカのニューイングランドの貧しい農家の出身でした。

幼い頃から既に知性に優れていたリバモアは、父と同じように働いているだけでは将来の冒険や成功はいつまでたっても実現することは出来ないと次第に悟っていきます。

そしてリバモアが14歳になった時のことです。彼は母から貰った5ドルをポケットに、生まれ育った故郷を離れます。

ボストンに降り立ったリバモアは、当面の生活費を稼ぐ手段として証券会社のチョーク・ボーイとして働くことになります。

これが、リバモアの株式市場との出会いでした。

チョーク・ボーイとして働いていたその時の体験が、その後「グレートベア」という異名でウォール街で広く知られるようになったリバモアの成功の根幹になったのでした。

 

世紀の相場師は得る額も失う額も桁違い

リバモアの生涯で最も利益を上げた瞬間は、1929年の世界恐慌の時でした。

青天井に上昇していく株価を日々観察しながら、リバモアはその中に彼にしかわからないいくつもの暴落直前のシグナルを読み取ります。

終わりのない株価の上昇を信じて疑わない大衆がこぞって買い注文をしている最中、リバモアは「売り」の枚数を着々と増やしていていったのです。

そして訪れた暗黒の木曜日。

アメリカの株価総額の3分の1以上が消滅したその大暴落の最中に、リバモアは1億ドル以上の利益を上げます。

1億ドルは現在の貨幣価値だとおよそ4,000億円くらいだそうで、個人がそう易々と稼げる額ではありません。

巨万の富をその手にし、普通ならこの時点で順風満帆な人生を送っていけるものだと誰もが思ってしまいますが、リバモアの場合はそうはなりません。

その後のリバモアは家庭の崩壊からくる精神衰弱のために、勝負勘や相場への熱意を次第に失っていきます。

そして、それに伴いリバモアの資産はみるみる内に萎んでいき、度重なる司法上の争いの敗訴による支払いのために、1934年にはリバモアは人生で4度目の破産を経験することになります。

 

リバモアの投機手法

リバモアはそのときの保有資産や時代の流れに応じて、投機手法を少しずつ変化させていきましたが、次の3つの要諦はいつの時代でも最重要のものとして認識していました。

  1. タイミング
  2. 資金管理
  3. 感情の抑制

中でも、リバモアは3番目の「感情の抑制」が最も重要だと主張します。

「感情の抑制」について、リバモアはいくつものルールを設けています。

確かに言われれば納得のいくものばかりですが、やはり感情のコントロールというものは、実行に移すのがとても難しいと感じます。

リバモアの「感情の抑制」に関するルールのいくつかを以下に紹介します。

  • 期待、あるいは予想してはならない。
  • 株は人間と同じで、それぞれが異なった「顔」をもっている。人を観察する要領でそれぞれの銘柄に目を向けること。
  • ある銘柄がなぜ特有の動きをするようになったのか、その原因究明に多大な時間を振り分けても意味はない。
  • 他人の忠告に耳を貸すと、往々にして、自らの確信が揺らぎ、自分の判断は間違っているかもしれないと迷い出す。
  • 「ここだけの話」は、親戚、恋人、友人、知人と、あらゆる方向から入ってくる。「危険でない情報は存在しない。すべての情報を排除する」ことを忘れてはならない。
  • 取引にかかわる辞書から「希望」という文字を排除せよ。
  • 気持ちの浮き沈みに振り回されてはいけない。
  • 「株式市場はいつの時代も変わらない。」株式市場で変化するのは、そこに出入りする顔ぶれだけである。
  • 自分なりの取引手法に忠実に従うこと。
  • 株式投資は「安全重視」の貯金とは違う。
  • 単独行動に徹し、自分の資金の行方は自分で決めること。

これらのルール一つ一つに関する具体的な解説も載っていますので、詳しく知りたいという方は実際に読んでみることをお勧めします。

 

全体の感想として

リバモアが活躍していたのは今からおよそ100年前の株式市場の舞台での話でしたが、その投機手法のほとんどは現代の相場でも十分通用するものだと思いました。

そして、この本を読んでみて一番に感じたことは、彼ほど真剣に相場に向かい合い、時には身を亡ぼす覚悟がなければ決して「相場で一攫千金を狙おう」などという甘い考えを持つべきではないということです。

また、「大金を稼ぐ」イコール「満たされた幸せな人生」ではない、ということも改めて思い知らされました。

「本気で相場で買ちたい」と思っている方にとっては必読の書であると思いますし、単に読み物としても面白かったので、投資などに興味がない人にもおすすめの一冊です。

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